テナーサックスの選び方:ヤマハとヤナギサワで迷う


数年前、テナーサックスを買いました。楽器の知識がまったくない状態からの買い物で、まず何をしたかというと、知り合いのサックス奏者に相談しました。返ってきた答えは、いま思えば的確なものでした。「ヤマハかヤナギサワがいいんじゃない?」。そこから調べ始めて、最終的に中古を必死で探すことになるまでの記録を残しておきます。

初めての1本は「メーカーを2つに絞る」「クラスを下げすぎない」「中古も含めて探す」の3段階で決まりました。

第1段階:メーカーを2つに絞る

楽器選びの最初の壁は、選択肢が多すぎることです。サックスのメーカーは国内外にいくつもあり、素人には価格以外の違いが分かりません。

そこで相談した奏者の助言が「ヤマハかヤナギサワ」でした。どちらも国産の2大メーカーで、品質が安定していて、扱っている楽器店も修理できる技術者も多い。初心者が最初の1本で失敗しにくい選択、ということだと理解しました。とくに初心者にはヤマハが勧められることが多いようです。

この一言のおかげで、比較対象が一気に減りました。楽器選びで最初にやるべきは、スペックを調べることではなく、信頼できる人に選択肢を絞ってもらうことなのかもしれません。

第2段階:「下のクラスだと物足りなくなるかも」

次に受けたのが、いちばん効いた助言です。下のクラスだと、続けているうちに音に物足りなさを感じるようになるかもしれない。

入門機を買って、上達したら買い替える。よくある考え方ですし、筆者も最初はそのつもりでした。ただ、この助言を聞いてから、その計画には見落としがあると気づきました。買い替えるということは、そのときにまた10万、20万円を出すということです。しかも、物足りなさを感じている期間はそのまま練習の質に響きます。

とはいえ、最初から中位機を新品で買うには予算が足りませんでした。ここで浮上したのが3つめの選択肢です。

第3段階:中古を必死で探す

新品で下のクラスを買うか、中古で上のクラスを狙うか。筆者は後者を選びました。ここからが大変で、楽器店の中古在庫を見て回り、オンラインの中古楽器サイトを毎日のように確認する日々が続きます。

サックスの中古が難しいのは、個体差と調整状態で吹き心地がまったく変わることです。同じ型番でも、前の持ち主の使い方や保管状態、直近の調整の有無で別物になります。写真と説明文だけでは判断できず、かといって良い個体はすぐ売れてしまう。この綱引きが「必死で探す」の中身でした。

結果として、狙っていたクラスの1本を手に入れることができました。この買い方を勧められるかというと、正直、人によります。ただ「予算の範囲で、なるべく良いものを」と考えるなら、新品の下位機と中古の中位機は必ず比較の俎上に載せるべきだと思います。

現行ラインナップの価格表(2026年8月時点)

当時と今では品揃えも価格も変わっています。これから探す人のために、両メーカーの現行テナーの価格を公式情報から並べておきます。まずヤマハ※1。標準的なゴールドラッカー仕上げの税込希望小売価格です。

型番税込価格位置づけ(公式の言葉)
YTS-380253,000円※2上級モデル譲りの外観と滑らかな吹奏感
YTS-480341,000円※3ネックの”鳴り”を向上。カスタムのネックへ交換可能
YTS-62528,000円※4信頼性の高い性能と卓越した品質。定番モデル
YTS-82Z693,000円※5明るくシャープでソリッドな音色
YTS-875EX825,000円※6深く洗練されたサウンド。クラシック向けの最上位

なお、アルトサックスには入門機のYAS-280がありますが、テナーにYTS-280は存在しません※1。テナーは25万円のYTS-380がスタートラインになります。「280と380の違い」を探して時間を使った身としては、先に知っておきたかった事実です。

ヤナギサワの現行WOシリーズは、クラスの階段ではなく、管体の材質と重量仕様の組み合わせで分かれます。以下は公式サイトの標準価格(税込)です。

型番税込価格管体材質位置づけ(公式の言葉)
T-WO1539,000円※7ブラス高品質と使いやすさで初心者から経験者までに愛される人気機種〈ライトタイプ〉
T-WO2572,000円※8ブロンズブラスやわらかなブロンズブラスのトーンを驚異の価格で実現した魅力モデル〈ライトタイプ〉
T-WO10665,500円※9ブラス信頼のメカとタイトに締まった遠達性のある音〈ヘヴィータイプ〉
T-WO20759,000円※10ブロンズブラス華やかさと豊かさに満ちた「色」を感じさせる音〈ヘヴィータイプ〉
T-WO371,980,000円※11シルヴァーしっかりとした厚みの力強い表現を聴かせる究極のシルヴァーソニック〈ヘヴィータイプ〉

並べてみると構造が見えます。ライトタイプ2機種とヘヴィータイプ2機種が、それぞれブラスとブロンズブラスで対になっている。ヤマハが価格の階段を上がるほど上位機になるのに対し、ヤナギサワは同じ重量仕様の中で管体の材質を選ばせる設計です。

もうひとつ、この2つの表を並べて初めて気づいたことがあります。ヤナギサワの入り口であるT-WO1が539,000円※7で、ヤマハでいうとYTS-62の528,000円※4とほぼ同じ位置にあるのです。「ヤマハかヤナギサワか」という問いは対等な二択に見えて、実はスタートラインの高さが違う。予算25万円台ならヤマハから選ぶことになり、50万円を超えたあたりで初めて両者が同じ土俵に並びます。当時これを分かっていたら、探し方はだいぶ違っていたはずです。

調べても分からなかったこと

  • 中古の相場。同じ型番でも状態と時期で価格が大きく動くため、目安として書ける数字が見つかりませんでした。実際に何店か回って肌感を掴むしかないと思います。
  • 音色の違いを客観的に示すデータ。倍音構成の測定値のような比較は公開されているものが見つかりませんでした。結局のところ、この差は試奏でしか分かりません。
  • 実売価格。表に並べたのはヤマハの希望小売価格とヤナギサワの標準価格で、店頭で実際に支払う額ではありません。管楽器は店ごとの値引き幅が大きく、実売の目安として書ける数字は見つけられませんでした。

まとめ:楽器選びで効いた3つの助言

振り返ると、自分で調べて分かったことより、人に聞いて分かったことのほうが決定的でした。

  1. メーカーを絞る — 「ヤマハかヤナギサワ」。選択肢を減らすことが最初の一歩
  2. クラスを下げすぎない — 「下のクラスだと物足りなくなるかも」。買い替え前提の計画には見落としがある
  3. 中古も選択肢に入れる — 新品の下位機と中古の中位機を比べる。ただし個体差との戦いになる

楽器の情報は世の中にあふれていますが、価格表を眺めているだけでは決められません。あのとき奏者に相談していなかったら、たぶん入門機を買って、数年後に買い替えていたと思います。もしこれから始める人が周りにいたら、まずは吹いている人に聞いてみてください。というのが、数年経ったいまの実感です。

(ちなみに、手に入れたあと最初につまずくのは楽器選びではなく譜面のほうでした。譜面の「ド」を吹くとピアノの「シ♭」が鳴る件は、別記事で調べています。)

参考文献・出典

※1 : 「サクソフォン - 管楽器・吹奏楽器」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/index.html

※2 : 「YTS-380 - サクソフォン - 概要」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/yts-380/index.html

※3 : 「YTS-480 - サクソフォン - 概要」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/yts-480/index.html

※4 : 「YTS-62 - サクソフォン - 概要」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/yts-62/index.html

※5 : 「YTS-82Z - サクソフォン - 概要」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/yts-82z/index.html

※6 : 「YTS-875EX - サクソフォン - 概要」 |ヤマハ https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/yts-875ex/index.html

※7 : 「製品情報 | Tenor | T-WO1」 |YANAGISAWA Saxophones Official website https://www.yanagisawasax.co.jp/saxophones/view/717

※8 : 「製品情報 | Tenor | T-WO2」 |YANAGISAWA Saxophones Official website https://www.yanagisawasax.co.jp/saxophones/view/718

※9 : 「製品情報 | Tenor | T-WO10」 |YANAGISAWA Saxophones Official website https://www.yanagisawasax.co.jp/saxophones/view/719

※10 : 「製品情報 | Tenor | T-WO20」 |YANAGISAWA Saxophones Official website https://www.yanagisawasax.co.jp/saxophones/view/720

※11 : 「製品情報 | Tenor | T-WO37」 |YANAGISAWA Saxophones Official website https://www.yanagisawasax.co.jp/saxophones/view/721

よくある質問

初めてのテナーサックスはどのメーカーがいいですか?

筆者が知り合いのサックス奏者に相談したときの答えは「ヤマハかヤナギサワ」でした。国内2大メーカーで、どちらも品質が安定しており、修理やメンテナンスを受けられる店も多いためです。とくに初心者にはヤマハが勧められることが多いようです。

入門機を買って、あとから買い替えるのはだめですか?

選択肢のひとつですが、「下のクラスだと音に物足りなさを感じることが出てくるかもしれない」という助言を受けることがあります。長く続ける見込みがあるなら、最初から中位機を狙って中古で探すという買い方もあります。筆者はこの方法を選びました。

サックスの中古はどこで探せばいいですか?

管楽器を扱う楽器店の中古在庫、専門の買取販売店、オンラインの中古楽器サイトなどです。ただし個体差が大きく、調整の状態で吹き心地がまったく変わるため、可能な限り現物を吹いて確かめること、信頼できる店で買うことが重要になります。